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木尾桜と椎野晴美
坂崎秀介は高校三年の春、思い人である木尾桜に告白された。
「私、晴美を殺したの」
桜のその足下には髪を振り乱して倒れている椎野晴美がいた。その晴美の首にはまだ巻かれた紐とその痛々しい跡が残っていた。
桜は淡々と言葉を発し落ち着いているように見えたが、その瞳の奥の真意は秀介には分からなかった。
言葉が出てこない秀介の前で、桜は屈むと晴美の髪をそっと捲くりあげて本当に死んでいるかを確認するように覗き込む。
晴美の整っていた顔は見るも無惨な死人のそれに成り果てていた。秀介はそれを見て吐き気と怖気を催した。
「ねぇ」
桜が振り向く。その何気ない仕草に秀介は少しときめいてしまう。
「山に死体を埋めに行こう」
いたずらっぽい表情で誘うように桜は笑った。
「共犯者になってくれる?」
その提案は秀介にとって、とてもとても魅力的なものに思えた。
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