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男女の仲を親密にするための方法の一つとして、一つの困難を一緒に乗り越える、というものがあるだろう。二人が結束しお互いに頼ったり頼られたりすることで仲が深まる、そんな状況だ。
俺はふと、まさに今この状況はそれに当てはまるのではないかと気づいた。
いや、ある意味最初から分かってはいたのかも知れない。いくら好きな人の頼みとは言え、死体を山に埋めるなんてリスクの大きな事を、簡単に受け入れる程俺は馬鹿ではない。そう、頭では思っていた。
木尾に共犯者になって欲しいと頼まれてから今の今まで、俺は疑問の余地を挟むことなくとんとん拍子でここまで木尾を助けている。恋は盲目というがここまで自分が馬鹿だったのかと呆れると同時に、馬鹿で良かったとも思った。なぜなら馬鹿じゃなけりゃ木尾を助ける選択肢は選べなかっただろうから。
もっとも理想を言えば俺の想いを木尾に直接伝えられていれば良かったのだが、それには勇気が足りない上に、そうできない厄介な事情があったので致し方無い。
だから今の状況は良い状況だ。共犯者になって木尾と親密な関係を作る、それが実現できるなら多少のリスクなど簡単に受け入れられる。
山に死体を埋める。ただそれだけの事ですべては上手く行く。
担いだ袋の重みがそのまま木尾の信頼の重さであるかのように感じられ、俺は嬉しくなった。
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