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真っ暗な山の中で、私は晴美の死体が入った袋に寄り添って寝ていた。仰向けに寝転がると木々の隙間から星が見えた。
傍らにある穴の底では坂崎が無惨な姿で死んでいる。
坂崎は私に好意があったからここまで私に付き合って来たのだろうが、最期まで私に好きだと告げなかった。その点に関してはきっと坂崎と私は同じなのだろう。勇気がなかったのだ。
寝返りをうち、晴美の方を向く。そして袋越しに晴美を抱きしめて、目を閉じる。
私は晴美が好きだった。恋は盲目というから、あまりにも好きすぎて何か間違った判断をすることもあるだろう。けれど今は晴美のためにできることを全力でした。それが本心から嬉しかった。
「…結局、告げられなかった」
私は独りごちる。
できなかった告白に想いを馳せて、私は目を閉じたままで声もなく笑った。頬を一筋の涙が静かに伝った。
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