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クルーズ船が出航して行く。
まだ1度も乗った事がない。
静かになりつつ海に向かって『馬鹿野郎ー!』と叫ぶと溢れ出した涙。
悲しい訳じゃない。
辛いんじゃない。
ただ、ただ、悔しいんだ。
真面目に働いていた私がやってないと言っても、信じてもらえかった事が悔しいんだ。
「泣いてるのか?」
そんな声が聞こえたけど、私にではないと思った。
暫く海を見てから涙を拭き、踵を返すと知らない男の人が私を見ている事に気づいた。
日本人には珍しい深海の様な髪の色に、冷たく感じる瞳も深海を思わせる。
切れ長の目に、整った鼻筋。
キラキラと光るイルミネーションに照らされたその人を素直に綺麗だと思った。
でも、私には無縁の人。
その人の側を通り、神戸駅へと向かう。
私に言われた言葉じゃなかったけど、誰かに見られていたと思うと恥ずかしくなり、速足になる。
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