1人が本棚に入れています
本棚に追加
はじまり
「ふむ。今回も駄目だったか。少しは耐えてくれていたから期待していたというのに…。もう後がない。次が最後だ。ねえ、ー。最後はこの子を呼んできてくれないかい?」「畏まりました。主様。」
日曜の朝、普段より遅く起きてきた俺に「空羽!起きるの遅いよ!もう−君来てるけど。急ぎなさい!まったく」と母さんがキッチンから怒った。
朝から誰が来たのだろうか。とりあえず、誰かを待たせているというので急いで支度をして玄関の扉を開ける。
そこには日曜だというのに制服姿の、見知らぬ美人がいた。濡羽色の艶やかな黒髪、サラサラとしたショートヘア。背は170cmの俺より少し低めで167、8cmらへんだろう。睫毛も長くて、色白で中性的な〜。制服はズボンなので、男なのか…。と一人で落胆していると、
「おはよう。空羽。何キョトンとしているんだ?」と彼は親しげに言った。
「えーと、ドチラサマですか?」と言うと、「寝ぼけているのか?僕は釉。君の同級生なのに。毎度毎度、君のテスト勉強の面倒見てあげてるのは僕。これから一緒にテスト勉強するって前に約束してた。どう?思い出せた?」と彼が言った途端、急に目眩がした。
釉はいっつも助けてくれてたのに何で忘れてしまっていたのだろう?釉は不器用な俺の貴重な友人だと言うのに。
少し立ち止まった俺に釉は「大丈夫?図書館まで耐えられそう?」と声をかけてきた。「平気平気。釉のこと、寝ぼけて見間違えてたや。どちら様だなんて聞いてごめん。釉」と謝る。その後は何事もなく、一日が終わった。
最初のコメントを投稿しよう!