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イザナギ
空羽は夢の中にいた。今までのどんな夢より無色無音、そして逆光の中、声だけが聞こえる。
「あの御方は変わらないな。も、今は釉だっけか?ずいぶん変わっているが、あの冷たさと感情的なのとあの綺麗な青磁色だけは変わってなくて安心したよ。」謎の人物から釉と多分イザナギ様についての感想を俺の夢の中でされる必要ある?誰?しかも俺についてノーコメント?!
謎の人物影へツっこんでおく。しかしまた視界は暗転していく。
荒界、文字通り荒れ、闘争に溢れた、力のみが全ての世界。
神も仏もいない、暗い闇夜の世界。
荒界の最下層、鬼層。
最も危険な力をもつ魂は人の形をとると、空中を手刀で切り裂く。 そこには三界を壊す原因の亀裂が生まれ、人界の様子が見える。人の形を取ったその魂の周りにはその魂によって生みだされた亀裂が切り取られ水晶玉や鏡に保存されていた。
これで和界にあった四魂の内の一つ 奇魂は吸収できた。残りは二つ。四魂を集め、私はようやく、全てを取り戻し、荒界へ私を追いやった奴らに復讐できる。奇魂を吸収してですら、記憶は、私が荒界へ落ちたあの時からしか無いというのか…。必ず全てを取り戻し復讐してやるのだ。」
そして、高位の神にしか持てぬ神器を 荒魂は取り出す。彼の神器は黒く光る神弓。矢は無い不完全な神器だが、弓だけでも荒界の大気を震わす絶大な力を持っていた。
時を同じく、幻界。
そこにはイサナギしかいなかった。
白き満月の浮かぶ晴天に水面が広がる空間。天と水面二つの蒼に挟まれ、
イザナギは本来の姿へと戻る。背は伸びて175cmくらいに。
ボサボサのショートヘアから澄みわたる幻界の空のような蒼。天色(あまいろ)の長い髪を束ねている。くすんだ灰色の目は瑠璃色へと、左目には金粉、右目には銀粉を散らしたような目になっている。
服は平安時代の貴族のような狩衣だが冠はない。 しかし力が不安定なのか、衣装も飛鳥時代の朝服や奈良時代の文官の礼服や、水干、直垂等の瞬間もあった。髪の色も時間が経つ につれ濁っていく。背も縮んでいく。
(...時間も力もあまり残されてはいない。やはり何かが欠けてしまったのだろうか。神代の頃もあまり思い出せなくなってきている。幻界に来るまでの一体私は何をしてたのか。誰とどこにいたのか。思い出せない…。
時折、何かを思い出せそうな事もあったがそれすらこの頃パタリと止まってしまった。)
天色の光の粒が風に流れていくと、ボサボサショート、ダサいパーカー姿へと戻っていく。
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