イザナギ

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袖は数百年ぶりに自らの空間へ戻っていた。二、三千年前に イザナギ様から与えられた自らの空間。日本家屋と庭園、そして 桜などしか無い質素な空間。袖は常にイザナギ様の補佐など、 幻界と和界、たまに人界を飛び回っており、自らの空間へは、賜って以来手で数える程しか無かった。 障子を全て開け放ち、庭園を眺めなが 深呼吸を何度かする。 柏手を一つ響かせると、釉の髪色と同じ青磁色の光が集まり、釉の分身体が出来る。釉が自分の気持ちを整理する 時によくやる手段で、分身体の自分と刃を交えることで、自らを見つめているという事らしい。 分身体の方が全体的に色味が薄い。文身体は前回釉が訪れたとき、数百年前の釉をコピーしている。 全く同じ動作で刀を抜く。釉と分身体との本来の実力差はオリジナルの方が圧倒的に強いが、オリジナルの釉の心に迷いや 隙などの悩み事、後悔、霊力の消耗毛があると分身体との実力は拮抗する。 刃を交え、何合も打ち合う様子はまるで舞の様だった。そんな中、釉の頬に刀傷が一筋入ったがすぐに治った。が、心の動揺は著しく、劣勢へと 追い込まれる。分身は無表情で無言で釉を追いつめ、ついには釉の首筋ギリギリに刃を向けると、釉によって分身は姿を消された。 (この分身は前回、数百年前の私をコピーしたもの。やはり力は落ちたでは…。数百年前の私の五、六割の実力のコピーにすら負けるとは…。このような 体たらくだから、主様は人間なんぞに協力を頼んでしまったのだ。) 神の各属には力を増やす手段はある。主の力を増やす。あるいは主から再度神力を分け与えてもらう手段と他者のエネルギーを吸収するという手段の二つだ。 釉の主、イザナギは自らの神力を制御できておらず、釉は霊力を上げるには他者のエネルギーを吸収しなくてはいけない。他者のエネルギーを吸収する為に荒界で弱い魂が集まる上の方の階層 烈層へと向かおうとする釉、そこにイザナギがやって来た。 「空羽が目を覚ましたので、皆に再び集まってもらって、三界の状況の説明を続けようと思ってね。釉も平気そうだね。さあ、行こう。」
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