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翌朝、「釉君が来てくれてるわよ~。また待たせてるんだから。外で長いこと待たせるのもいけないから玄関に入ってもらったけどね。釉君にちゃ~んと謝りなさいね!」と言う母さんの声を聞き流しながら玄関へ急ぐ。
「ごめん!お待たせ、釉」「もう時間が無い。急ごう、空羽」と釉に手を引かれながら扉を開けて外へ出た。
しかし扉の外は普段の見慣れた世界ではない。空中には灯篭が数多く浮かんでいる。晴れた空には、大きな満月と太陽が同時に存在している。そして町並みははるか遠い、ってかこれ、俺ら空中にいないか?でも何故か足場があるし...とここまで外へ出てから約1秒。そして次の瞬間、俺と釉は先程まで存在していた足場が急に無くなり、空中へと放り出された。
キョロキョロとあたりを見回してなんとか助かろうともがく。
そして隣にいるはずの釉を見た。何故か濡羽色のショートヘアから青磁色、淡い青緑色のセミロングぐらいの長髪へ変わっているし、服も制服からチャイナ服と着物を混ぜ合わせたような不思議な服になってるし...。
「え~っと、釉ですか?」何故か敬語になってしまった。そうせざるを得ない不思議なオーラがあった。無言で釉と思われる彼は俺の手を掴んだ。
途端に落下していた身体がふと楽になり強く吹き荒れる風がピタリと止んだ。
「やっと気付きましたね。私は釉ですよ。ご心配なく。落下してから私に気づかれるのが遅かったのでどう術をかけようかと思ってました。学友と信じさせるための術も効きづらかったので、貴方に抵抗なく今の術を受けてもらえて良かったです。姿が変わっていて驚かれたかも知れませんが、こちらが本来の姿なのです。さて、色々と聞きたいこともありましょうし、暫くは落下しながら質問に答えましょう。」
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