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幻界
ようやく体を動かせるようになり、視界のピントも合う。体の鈍い痛みはまだ残っているが平気な方だ。立ち上がろうとすると、周りが急に明るくなる。 釉が小声で「伏して下さい。主様が来られます。姿勢を正して。」訳が分からないまま、釉と同じ格好をとる。 オオクニヌシも跪いているが、顔を上げている点は俺らと違っていた。
誰かの声がする。「突然こっちの招いてしまって悪かったね。少し空羽が辛そうだから 波動、分かりやすく言えばオーラだね。少し抑えるね。」と周りの青い 明るさが少し楽になり、顔を上げられるようになった。
『神様-I am God-』と書かれたダサいパーカーによれよれの ズボン。背は俺より低くて、165cmぐらい。髪はボサボサのパーマ気味のショートヘア。
目はくすんだ灰色。顔立ちは良いのに手入れ が雑すぎて残念な格好の青いオーラを纏う人(?)がそこに居た。
「ごめんよ。第一印象を良くする為に無理して神っぽい神演じようとしたけどあの姿キッツイんだよね。普段はこっちの姿だから安心してね。あれ?空羽が状況飲み込めてなさそうだね。ここは幻界。 三界全てが重なり、三界の均衡を保つ役割を担ってる。僕はここの管理者で釉の主、イザナギだよ。気軽に、主様とかイザナギ様って呼んでね。あれ?もしかしてオオクニヌシ?久しぶり! 何年ぶりだろ?僕が高原から神上りする前からだっけ? 幻界に来て以来かな?ずいぶん残念ない姿に…。」と30後半の見た目のオオクニヌシと10代前半な見た目のイザナギ、まだオオクニヌシ の方が服装的にマシなのだが…。
「主様かような雑談もよろしいですが空羽を連れてきた理由をお話しになられてはいかがでしょうか。オオクニヌシも我等が動くほどの理由や事情を知りたいらしいですから。」と釉が脱線した話を戻した。 「そうだね。ありがとう釉。まず空羽には僕達の手助けをしてほしいんだ。僕は三界を作り上げ管理しているのだけどね。」「いやそうには 見えないッス。」「空羽!貴様主様にまでかような無礼!今まで、私に対する数多くの無礼は百歩、万歩譲って許してやっていたが、もう我慢ならん!この人間風情が【言葉の限りを尽くした罵倒、罵詈雑言】」と釉が鬼神の如き圧で怒ってくる。釉の手の平に小さな光の粒が集まり出す。オオクニヌンが慌てて釉を抑えようとする。「人間相手にその大きさの光球を放つのは危険だ!落ち着け!」「邪属する者は許しません。あと 私はいつも冷静ですよ。」冷たく笑うと袖はオオクニヌシに向かって光の球を放った。瞬時に10m程オオクニヌシが距離をとる。しかし光球の方が速く、オオクニヌシを50m先程遠くまで吹っ飛ばした。加えて釉が手で何かを抑えるような仕草をする。するとオオクニヌシは圧力をかけられ、立ち上がれなくなってしまった。見かねたイザナギ様はもう一度、今度は俺に向かって放たれた光球とオオクニヌシにかけられている謎の圧力を手を一度振っただけでかき消してしまった。
「釉が失礼をした。空羽も、オオクニヌシもごめんね。釉落ち着いて。 何でも協力してくれる者に危害を加えるだなんて…。人手の足りぬ 今、私がそれを望むと思うかい?」
「すみません。ですが!人との分別をわきまえていない空羽は」「分別って言われてもな。こんな神っぽくないダサい格好の 神を敬える訳…」「皆まで言ったらどうなるのかすら分からんのか !人間!こんな者が協力者になりうるとは思えません!イサナギ様!!」 人界や和界で優しくしてくれた釉は
一体どこへ行ったのだろうか。何も知らない俺にたくさん教えてくれていた釉と目の前の釉のギャップに現実から逃げていると、イザナギ様が軽く手を叩いた。
「はいはい。仕切り直そう。事情を説明するから。釉は力を霧散させ 、俺が現実逃避から現実へ戻されると、どこからかテーブルとイスが 人数分出てきた。(まあ、うん。異界だし、神様らしいし、空中から何かを出せて当然か。)と俺の感覚も麻痺してきた。そこからイザナギ様の 長い話が始まった。
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