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軽い沈黙の後主人は言った。
「君は一族の絵をこうしてただで集めると言うのか?」
主人の問いに俺は答えた。
「全てに巡り合うとも限りません。
全てを手に入れたいとも限りません。
ただ、この絵は僕の絵です。」
主人はもう一度、絵に視線を戻すと息子に言った。
「この絵を外してくれ。」
主人は息子の言動を制して梱包するように命じた。
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俺は家に帰るとグリーンのコンタクトを外した。
こんなもので顔料が見分けられる訳ないだろう。
ふん。
鼻で笑うと誰が描いたか知らないけど
俺じゃ買えない、なんかいい絵を壁に飾った。
一方、お屋敷では
「お父さん・・よかったんですか?」
「ああ、構わん。
悪い気はしなかったからな。」
そう言って、顎髭の感触を人差し指で確認する主人が目を細めた。
「あれは、私が描いた絵だ。」
「え?
えーーーーーーっ!?」
一族とは縁もゆかりも無いその男は満足そうな顔をして
何もかかっていない壁を見つめた。
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