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久しぶりの一家団欒のひと時なのに僕も父様も嫌な汗が額から流れていた。恐らく僕と同じように背中の方でも流れているのだろう。
シルバーウルフよりも怖いんですけど(汗)
そう思っていた時、突然家のベルが鳴らされた。
カランカラン
「あら、誰かしら?」
突然の訪問者に僕と父様はこの緊迫した空気から逃れる事が出来た。居間で皆が待っていると、コンコンと扉を叩く音がした。この叩き方はいつも聞き慣れている優しくて暖かい気遣いの有るノック音。
「どうぞ」
「失礼します奥様、こちらを」
「アンナ、ありがとう」
何か封筒の様な物が見える。今まで見た事の無い豪奢な材質なのか全体的に白を基調としているが外枠は金色で囲われている。また真ん中には見慣れない刻印の様なものが見えた。蝋で固めたのだろうか?まるで薔薇の華を使用した様に赤々とした色合いだ。
「このシーリングスタンプは教会からだな。しかもこのマークはオムニバス様のものだ」
「オムニバス……キャバリエ?」
「ああ、そうだ」
「どうして家にこんな物が ?」
「ミランダ取り敢えず中を見てみよう」
「ええ、わかったわ」
そう言って母様が手紙を便箋の中から取り出そうとした時、割って入る様になにかしら慌てた様子で侍女のアンナが言葉を付け加えた。
「旦那様、奥様」
「ん? どうしたアンナそんな大きな声を出して」
「申し訳御座いません。実は、玄関にお待ちの方が……」
「そうなのか、何故それを最初に言わない。それじゃあそれは私が対処することにしよう。ちょっと二人は此処で待っていてくれ」
そう言うと父様はおもむろに椅子から腰を上げると、足早に居間を出て行った。母様は取り出しかけた手紙を一旦中へ戻すと、テーブルの上に置きスカートの裾を両の親指と人差し指でギュッと掴んだ。それはギュギュっと力ずよく音を立てた。
ウチに一体誰が訪問しに来たと言うのだろうか……。
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