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耳を攲てていると、玄関の方でかすかに何やら揉めているような声が聴こえて来た。今の扉が閉まっているため、一体どのような会話をしているかははっきり分からないが、いつもの父様の声じゃないのは確かだ。
声が止むと、ドタドタドタと床を踏みつける音が廊下の辺りで響いていたかと思うと、物凄い勢いで父が部屋に入って来た。
「信じられない、信じられないぞ!?」
彼の一声はこうだった。
物凄く驚いた表情をし、そこには怒りよりも喜びに満ちた顔をしていた。
「いいか、聞いて驚くなよ。我が家に爵位が返されることとなった。特に王国騎士団へ戻る必要もない」
どうやら、誰かと争い合っての声ではなく、興奮するほどの吉報に父は大きな声を出さずにはいられなかったようだ。しかし、腑に落ちないことがある。それは母様も同じで、すぐに理由を父様に確かめた。
「一体どうしてよノラン、例え今回のシルバーウルフの件が有ったとしても、そんなに早く王都へお話が行くはずないわ」
「ああ、そうだその通りだミランダ。理由は他にある」
「それって何かしらの交換条件が有るってこと」
「ああ条件は二つある。一つは手紙に書かれているそうだ。もう一つはまだ正式には決まっていないらしく、追って通知があるとの事だ。だが、王国騎士団に戻る事はないらしい」
「そう……。一つ目は此処に書かれているのね」
そう母様は言うと、先程とは違いゆっくり封筒の中に指をいれ、それを掴むと深く一度深呼吸してから、やおら手紙を取り出した。
そこにはこう記載されていた。
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