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K県までは遠く自転車で日数もかかり大変ではあったが、割りとすぐに目的の人物、田添先輩に会えた。
部活中だったので、田添先輩とは大学近くのファーストフード店で待ち合わせした。
「田添先輩、ずっと好きでした」
当然神崎柚子からの伝言です、と冒頭につけたが、気合が入り過ぎて伝言だけが大きな声になってしまった。
K大学ではちょっと有名な大学1年生男子へ、小汚い高校2年生の男子からの愛の告白。
この店のお客とスタッフはほとんどがK大学に通う学生。
周りからの注目は半端なかった。
「嬉しいよ。俺も神崎への想いを伝えられないまま卒業して、こっちに来て…後悔していたところなんだ」
と、まぁ任務は成功したが、この後の事態を収拾するのが一苦労だった。
僕の恋を応援してくれる皆。どんなに否定しても聞いてくれなかった。
部活がちょうど終わった神崎に連絡を取り、ふたりはお互い連絡先を交換し、田添先輩がA県に帰省する夏休みにはデートをする約束をした。
その話を渡辺杏美は聞いたのだろう。
「私も…お願いがあるんだけど、いいかな」
「何?愛の告白だけは、自分でして欲しいんだけど」
あんな恥ずかしい思いはもう二度としたくない。
「えぇとね、私のお父さんなんだけど…今日放課後、時間あるかな?」
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