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渡辺杏美の父親は、それから宣告された余命より3ヶ月長く生きて、この世を去った。
ずっと気に病んでいたことを許してもらえたからか、安らかな最後だったらしい。
その後、何かと僕に会いにくる彼女。
いつの間にか心を許し、付き合う間柄になっていた。
「ね、槙くん就職しないんでしょ?だったらさ、告白代理を仕事にしない?」
3年生の夏休み直前、大学の受験勉強中の彼女から提案された。
僕は卒業後は短期のアルバイトと放浪の旅を続けるつもりだった。
「HP立ち上げてさ。あ、それは私が作るから。メールでやり取りしてから、槙くんが依頼主と直接会うの。観光も兼ねてさ。槙くんの旅の目的ができて、良くない?」
そして大学に入学した彼女は、起業するにあたっての事務手続き、経理、クライアントとのやり取りを全てこなし、全面的に僕のサポートをしてくれた。
僕は報酬から必要経費を引いた額を給料として彼女に支払う事にした。
就職しても引き続きサポートをしてくれる彼女に、大変じゃないかと聞くと「便利ツール作ったから大丈夫」と返された。
便利ツールとは、要はクライアントからの依頼を入力すれば、簡単にタイムスケジュールを調整してくれて、最適な待ち合わせ場所もサーチして、クライアントにもお知らせしてくれるアプリらしい。
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