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一年前___わたしが中学一年生のときだ。
友達の明里から、つい最近まことしやかに囁かれるようになったという、
「シキカクシ」というウワサを聞いたのは。
「シキカクシって知ってる?」
: : :
「何それ。カミカクシみたいなものなの?」と私が聞き返すと、
「そーそう。カンがいいね。最近さ、近くの田んぼ道で自殺した人が出たの知ってる?」と明里が自慢げに答えた。
「まあ、うん」
「んで、金曜日にとなりのクラスのエリちゃんが行方不明になったのは?」
「朝の会で先生が言ってたから、知ってる。確かそこの田んぼ道から消息が解らなくなったんだっけ。で、それがどうしたの」
「それが〜、さっき言った「シキカクシ」のしわざだって言われてるんだよ!」
「はあ?話が飛びすぎてよく解らないんだけど…」
わたしは突拍子もない話に驚く。馬鹿らしくて興味も湧かないが、一応明里を満足させる為に、「もうちょっと詳しく説明してよ」と言っておく。
「ふっふっふ。よくぞ聞いてくれました。ウワサではね、あの自殺した人が「シキカクシ」となって化て出たらしーよ。その人はね、ずっと変な本を手に持ちながら、大きな鞄を背負ってブツブツ呟きながらここまで来てたらしーからね、ウワサによってはその本が宗教?の本だったり、まあ兎に角ね、そんな怪しげな感じだから「シキカクシ」、信じる価値があるでしょ?」
「ない。絶対にない」
わたしはそう断言した。途端に明里はつまらなさそうな顔になるが、呆れたような口調でこう続けた。
「まあそう言うと思ってたよ〜。でも一応最後に名前の由来だけ言っとくよ。
シキカクシのシキは春夏秋冬の四季で、カミカクシのように連れ去られた人が最後にいたところ_______まあ田んぼにさ、桜の花弁と緑の葉っぱ、紅葉とか四季に関わる植物が大量に落ちてるからなんだって。
あとは式隠しだとか色覚師だとか色々言われてるけど、この辺は私でもよく分かんないんだ〜」
人に何かを教えるときは最後までちゃんと教えてほしいと言いそうになったが、明里が話し終わった瞬間、チャイムが鳴った。
「あっ!やばっ、私今日日直なんだった〜!じゃ!」
と、明里が走り出すのを見て、わたしは溜息を吐いた。
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