11

6/13
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/253ページ
「もちろん今の段階では推測、というより想像でしかない。それに俺はフィスク課長や班長、皆のことはこれっぽっちも疑ってない。でも、班長も課長も結局のところ組織人だ。上に報告する義務がある。そうなれば、圧力がかかって捜査中止命令が出されないとも限らないからな」  まさか、そんなことがあるわけがない。ロイを疑っているわけではないが、信頼している自分から見ても少々行き過ぎであるように思えた。 「でも、そんなまさか」  苦笑いを浮かべながら言うと、ロイがくしゃくしゃと頭を()いた。 「確かにな、俺もやり過ぎだとは思ってる。でも、念には念をってだけさ」 「じゃあ、さっきの会議で話さなかったのも、それが理由ですか?」 「ああ。確証がないことを言って班長を困らせたくなかったしな」  確かにそうかもしれなかった。ドライバー元警部補の失踪が、実は警察に内通者がいたせいかもしれない、などと根拠のない推理を披露すれば班長は困るだろう。報告すべきか、自分の手元に置いておくべきか、かなり悩むはずだ。それをさせないように根拠を先に探す方が親切かもしれない。
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!