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「もちろん今の段階では推測、というより想像でしかない。それに俺はフィスク課長や班長、皆のことはこれっぽっちも疑ってない。でも、班長も課長も結局のところ組織人だ。上に報告する義務がある。そうなれば、圧力がかかって捜査中止命令が出されないとも限らないからな」
まさか、そんなことがあるわけがない。ロイを疑っているわけではないが、信頼している自分から見ても少々行き過ぎであるように思えた。
「でも、そんなまさか」
苦笑いを浮かべながら言うと、ロイがくしゃくしゃと頭を掻いた。
「確かにな、俺もやり過ぎだとは思ってる。でも、念には念をってだけさ」
「じゃあ、さっきの会議で話さなかったのも、それが理由ですか?」
「ああ。確証がないことを言って班長を困らせたくなかったしな」
確かにそうかもしれなかった。ドライバー元警部補の失踪が、実は警察に内通者がいたせいかもしれない、などと根拠のない推理を披露すれば班長は困るだろう。報告すべきか、自分の手元に置いておくべきか、かなり悩むはずだ。それをさせないように根拠を先に探す方が親切かもしれない。
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