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「ああ、たぶんそうだろうな、カイル」
ムーアが割り込まれたことを一顧だにせず言葉を返した。
「しかも、路地裏に引きずり込んで一突きにしているってことは、揉めた末にとかではなく待ち伏せていた可能性が高い。動機は怨恨で決まりですね」
自分の右二つ先にいるデスクからややがさつな声が再び飛んだ。ノックス班の先輩カイル・ターナーだ。短髪で日焼けしたやや浅黒い肌、二重の瞳としっかりとした太い眉、僅かに顎が張った顔立ち。スポーツマンという言葉がぴったりの風貌をしている。
「カイル、とりあえずムーアさんからの報告を全て聞いてからにしよう」
班長が明後日の方向に行きかけた会議の軌道を戻した。それに合わせたように再びムーアが喋り出した。
「続けるぞ。もう一つ、特徴的なこととして被害者が横たわっていた壁に『我らは罰なき罪を裁く者』、そう書かれていた」
現場で見た毒々しい赤い文字が脳裏を過った。現場に行っていない班長やロイは穿ったような表情を浮かべている。
「罰なき罪? なんですか、そりゃ?」
カイルがまたがさつな声を上げた。
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