BORDERLINE Ⅲ Case 03 罰なき罪

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「鑑識からの報告によると死因は胸部刺突によるもの。左胸を鋭利な刃物で一突きにされて傷は心臓まで達していた、これが致命傷でほぼ間違いないそうだ。被害者の着衣に乱れはあったものの激しく争った形跡はなかった。恐らく路地裏に引きずりこまれて抵抗する間もなく刃物で心臓を一突きにされたんだろうな」

　そこまでは鑑識のニックスが教えてくれた通りだった。全員が黙ったまま、時折メモを取りながら聞いている。

「機捜(きそう)からの報告では、第一発見者はナンシー・カートライト。近くにあるクアリタス・コーヒーのアザレア・パーク店で働いている女性だそうだ。なんでも彼女は出勤途中に路地裏で遺体を発見して通報したらしい。通報時間は本日21日日7時56分。凶器は発見されていない。それと遺留品の中には財布が残っており、その中に入っていた現金、クレジットカードなども無事だった。そう考えると物盗りの線は薄いだろうな」

　ムーアの報告はやや推測も混ざってはいたが概ね正確だった。

「正面から左胸を一突きってことは殺すつもり満々だったってことですね」
　報告を聞き終えるか否かのタイミングで大きな声が割り込んだ。