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確かに奇妙な言葉だった。この厳罰化社会では、罪はむしろ厳しく罰せられている。罰なき罪などあるとは思えない。
「分からん。被害者が立てかけられていた壁にラッカースプレーのようなもので書かれていたんだ。その建物に入っている風俗店の黒服はつい先日までそんな落書きはなかったと言っていたよ」
ムーアがさらりと返した。
「だとすれば、被疑者からのメッセージ、ってことですね」
ロイが会話に入ってきた。
もしそれが被疑者からのメッセージだとすれば必ず意味がある。罰なき罪、その意味に再び考えを巡らせた。
「まだ何も調べてないんだし、いきなりそう決めつけなくてもいいんじゃない?」
先走るカイルや自分達を諫めるように自分の左斜め前にいたシェリルが艶のある声を出した。声を聞いたカイルが不満げな顔つきで正面のデスクを睨みつける。
その視線の先には栗色で弱めのウェーブのかかった豊かな髪を湛えた女性がいた。たれ目気味な瞳、ふくよかな唇、色白の肌。色気があるようで、どこか母性を感じさせる雰囲気がある。
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