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咲倉佳奈は体が弱かった。
小さい頃から入退院を繰り返して学校に行けない日も多かった。
一年の三分の一は休んでいた小学生時代。ほぼ毎日学校に行けてた中学生時代。急に体調が悪くなってしまった高校生活。先日、心臓が痛くなって佳奈は入院した。そしてそのまま退院することはなかった。
次に目が覚めたとき、佳奈は花畑に立っていた。
すぐ隣にはとっても綺麗な水が流れる川があった。佳奈の家の近所にはこんな綺麗な川は無かったため、とても驚いた。透き通っていて、きらきらして、優しい風が吹いていた。
花畑ではいろんな花が咲いていた。二輪草、黄菖蒲、藤袴。少し遠くにユーカリの木もあった。季節も生息地域もバラバラで佳奈は不思議に思った。
そして、佳奈の手の中にはなぜか四つ葉のクローバーがあった。どうしてこんなものを持っているのか分からなかった。
後ろを振り返ると目の前に立派な白い髭の見知らぬおじいさんがいた。
「君の手の中に四つ葉のクローバーがあるだろう? 君は一度だけ願いを叶えることが出来るんだ。ただし死んでしまったことを取り消すことは出来ない。元の世界に行くなら最長でも一日だけだよ」
死んでしまったことを取り消すことは出来ない。おじいさんのその言葉に改めて佳奈は実感した。私は死んだのだと。
ここで佳奈は願った。「一日だけでいいから健康な体で高校に通いたい」って。
「では、夕方頃に帰って来れるようにしておこう。私のことを思い出したら周りの人も君がどうなったのかを思い出すからね」
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