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「思い出した?」
あすの声に、今学校にいたことを気づかされる。あすはいつ取り出したのか分からない携帯を、しまいながら言う。
「私、夢で言われたの。おじいさんに夕方になる頃に、かなに真実を伝えてくれって。そんなことあるわけないと思って、朝、学校に来たら、この間……冷たくなっていたかながいて。……でもあんな態度は取っちゃいけなかった。ごめん」
休み時間にせいかに言われた言葉を思い出す。きっとせいかは『でも怒っているっていうより混乱とか戸惑ってる感じ?』と言おうとしたのかも。
ドアががらがらと開かれる。
「あ。あすいた。ねえ、かなのことでさ……」
教室に入ってきたのはせいかだった。私が目に入ったようで立ち止まる。おじいさんの言っていたことは本当だったんだ。きっとせいかは思い出したんだ。
あすが私の方を見る。
「急に連絡したけど、せいかも間に合ってよかった」
私は二人の視線を感じ、自分の手を見る。木の板が並ぶ床が見えた。透けてる。
最後は笑った顔が見たいなと思ったのが声に出ていたのか伝わったのか、二人は顔を見合わせると私の方を見て、破顔した。……目に大粒の涙をためて。
私も笑えてるといいな。
足の方から光の粒となって、私は空へと飛び立った。
ある晴れた日、住宅街に二人の少女が立っていた。
「私、昨日あの子の夢を見たの」
「え!私もだよ」
ロングの髪の少女の言葉に、隣に立っていた元気そうなショートカットの少女がはねる。
二人は『あの子』について、話を続ける。
「あの子、体育で校庭走り回ってたんだよ。あと、朝早くに学校に来てた。……でも、私ひどい態度取ってた。何で、あの子のこと、無視するようなことしてたんだろう」
「私の夢も同じだよ。……確かに、あんたの様子がおかしいって相談された。あ、それでね、夢の中で貸した本が実際に失くなってたんだよ。そしたらさっきあの子のお母さんが部屋で見つけたのを返してくれて……」
ショートカットの少女はこれこれと、実際に本を隣の少女に見せる。
二人は顔を見合わせる。
「もしかして、あの時渡した四つ葉のクローバーのせいだったりして」
「ああ、四つ葉のクローバーで願いが叶うっていうやつ。あれって……言い方悪いけど、生きてる間だけじゃないんだ」
「現実だといいのにね」
「ね」
少女たちは歩き出した。
Fin
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