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気分転換にもなるしと、佳奈が下の玄関に行くと二人は驚いたような顔を見せた。
「佳奈、もう来てたの? 私たち佳奈の家の前で待ってたのに」
茶髪のショートカットの方──星歌にそう言われ、佳奈は首をひねる。
「……待ち合わせしてたっけ?」
「中学の頃からそうだったでしょ」
佳奈は記憶を辿る。しかし、中学の時は確かにそうだった気がするが、高校でもそうだったかは分からなかった。記憶が抜け落ちているように、ぽっかりと空いていた。
先程から、もう一人の友だち──明日香は口を開かない。
「でも、佳奈がもう学校に来てたとは驚いたよ。どっちかというと遅刻しかけてるから、今日もそうかなって話してたの。ね、あす」
ですよね、と佳奈は納得した。自分で想像した通りだった。
「あ、うん。……二人とも、あのさ、一時間目あと十分で始まるよ」
明日香が佳奈たちの手を引っ張って走った。しかし明日香は、一度も佳奈と目を合わせようとしなかった。
「私、あすに何かしたかな」
休み時間。佳奈はずっと読みたかった本を星歌に借りるついでに聞いた。明日香が係で先生に呼ばれて席にいない今がチャンスだということもあった。
星歌は腕を組んで答える。
「うーん。してないと思うけど、確かに朝から少しおかしいと思うよ。でも、怒っているというより……」
星歌の言葉がそこで途切れる。明日香が自分の席に戻ってきたからだろう。授業ももうすぐ始まるということもあって、佳奈は本のお礼を告げて、自分の席に戻った。
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