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そういやシュウさんも、初めて会った時仕込みをする師匠に見とれてたよな。あの頃は俺もまだ師匠に大して興味がなかったけど、今はその気持ちがめっちゃ分かる。
「これがイカスミだよ」
手が止まってる俺にも怒らずに、師匠はイカの目の上あたりにある縦長の袋みたいなのを指で取って俺に見せてから、小皿に入れる。確かに黒いものが出てきた。
「わ、マジで墨だ!」
「そうだ、今度イカスミ練りこんだパスタ作ろうかな」
さらっと言いながらさばき続ける手。ヤバい、俺も手を動かさないと。
「見て盗むのも勉強だからね。暇な時は横で見てたらいいよ」
あ、遠慮なく見てていいんだ。料理する師匠を近くで見てると、感心してついうっかり声出しちまうから、遠目で見るようにしてたんだけど。
「ありがとう、とりあえず今日はここまでにしとこう」
気づくともう六時近かった。そろそろ夜の開店の時間だ。
「はい、ありがとうございました!」
自然にお礼が口から出た。腕の筋肉が変な感じだ。でも気分はよかった。頑張って、少しでも師匠に近づきたい。改めて闘志が湧いた。
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