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「俺こそ、弱ったとこにつけこんですんません」  言うと、師匠は申し訳なさそうな表情になった。 「それはお互い様だよ。俺もユウゴに甘えたわけだし」  急に窓から強い風が吹きこんできてカーテンが舞い上がり、師匠の前髪を揺らす。笑顔が消え、遠くを見るような瞳になる師匠。 「……でもこれは、殺される代わりの罰だったんだよ」  視線を落とし、つぶやく。 「シュウが殺さないでくれ、生きてて欲しいって言うから生かしてやるけど、お前には生きてる方がつらいだろう、ってあのボスに言われてね」  そういや初めてここに来た日、そんなことを言ってたな。生きてて欲しいなんて迷惑だ、とも言ってた。 「ここで死んだら、シュウ君に悪いなと思って」  つまり、迷惑だと思ってもそれでも、シュウさんのために師匠は罰を受けたのか。それって、すげえ愛じゃね?  またシュウさんへの嫉妬がぶり返しそうになるのをこらえる。それよりも、感謝だ。 「最初は罰だったとしても、生きててよかったでしょ、師匠」  髪をなでつけながら、師匠は唇を噛みしめた。しっとりとしたシュウさんの歌声が、師匠に寄り添うかのようだ。  沈黙が続く。優しげな、でもすごくつらそうにも見える透き通るような横顔。  亡くした家族のことを思うと、すぐにはうなずけないんだろう。そういう師匠だからこそ、俺も妬けるけど好きなんだ。  やがて師匠は、うん、と声に出してうなずいた。少しさみしそうにも、申し訳なさそうにも見える顔で笑う。 「いや……。シュウ君がどうとかじゃなくて、結局俺も死にたくなかったのかも知れないな」  つぶやくと、師匠の表情はもっとさみしそうになった。 「いいじゃないスか、それで。一緒に生きていきましょ」  俺にできるのは、思いっきり明るく笑うことだけだ。俺に救われてると言ってくれたこの人が、俺につられて笑ってくれるように。  そうだな、と笑って、師匠の顔から少しさみしさが消える。 「ねえ師匠、来週は連休だし、たまにはどっか行こ」 「ああ、そうしようか」  笑顔を交わしあう。一緒に働いて、食べて、寝て、たまにはどっか遊びに行って。俺達はこれからも、こうしてふたりで一緒にここで生きていこう。       END
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