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始業式から二週間が過ぎ、高校には少しずつ慣れてきた気がするが、彼女の変化は未だに受け入れられずにいる。
教室に入ってくると早速ギャル仲間と合流し、ウェイウェイと挨拶を交わし始めるエマを見つめていると「おい、銀次」と正面から声がする。
「見すぎじゃね?」
視線を教室の入り口から目の前に移すと、クラスメイトの横山純がこちらを見つめている。
「ああ、ヨコヤマ。いたのか」
「数秒前まで話してたろ!」
ヨコヤマは入学して一番最初に仲良くなったクラスメイトだ。教室の席が一つ前だった事も大きいが、ヨコヤマ自身のコミュ力の高さのおかげで、打ち解けるのには時間はかからなかった。
「まぁ、見とれるのは分かるけどな。エマちゃん可愛いし」
「いや、あいつは……」
本当はあんなんじゃない。口にしようとして、押し留める。
「可愛いだけじゃなくて、性格もいい。胸もデカイ」
「大好きかよ」
「まぁな」
だけど俺が好きになったのは、粗暴でだらしない俺とは正反対。真面目で、優しくて、少し引っ込み思案なところがあるエマなのだった。
視線の先で「マジ!?ウケるぅ」と手を叩いているギャルではなく。
彼女への気持ちが薄れたわけではない、はずだ。
だけど、見た目だけではなく、立ち振舞いや人との接し方まで変わった彼女を、変わらず好きな人としていいものなのか。このまま告白していいものかという迷いが、俺の中で生まれてしまっているのだった。
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