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 昼休みに入るや否や、俺とヨコヤマは顔を見合せ、教室から駆け出した。  うちの高校に学食はない。その代わり近所の商店街のパン屋がやって来て、昼の間だけ売店を開く。  このパンが絶品で、学生価格で買えるという事も手伝ち、売店は毎日大変な混雑になる。  我ら1年A組の教室は幸いな事に売店に近く、授業が終わった直後に売店へ向かえば、混雑に巻き込まれる事なくパンを買えるのだった。  そうして戦利品を手にした俺達は、息を整えながら教室へと戻る。 「お前、それ全部食うのかよ?」  両手にパンを抱えたヨコヤマは「まさか」と笑いながら、机をくっつけて食事の準備をしている、女子の輪の中へと向かっていく。 「ご注文の品、お届けに参りました~」 「はいはーい」  パンを渡し終え、こちらへ戻ってくるヨコヤマ。 「よくやるよ」 「自分の買いにいくついでだし。この程度の労力で仲良くなる切っ掛けが増えるなら、寧ろコスパよくね?」 「それもそうかもな」  まだ知り合って日は浅いが、ヨコヤマはただのお調子者ではない事が最近になって分かってきていた。  こいつのコミュ力の高さは、こうした努力の積み重ねなのだ。  もしかしたらエマのギャル化も、アイツなりの努力なのかもしれない。と、不意に思う。
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