静かな箱、崩壊の音

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 ともあれ女の存在はイレギュラーであるのは認めざるを得ない。最悪の場合、女も手にかけるしかないのだろうか?  階数表示が『7階』を点灯した。じりじりとした沈滞(ちんたい)に胸を掻き毟られていた日吉はそこで、上着の胸ポケットに入れたスマホが振動していることに気付いた。メールではなく電話だ。  ブー、ブー、ブー。  そっと確認すると、通知名には『森駒(もりこま)』と表示されていた。最近、退勤後によく声をかけてくる部下の男だ。  そういえば昨日、社長室に詰めている日吉とはほぼ接点が無いにも関わらず、唐突に『明日の朝、カフェで朝食でも摂りませんか。』とメールで誘ってきていた。この電話にしろどこからアドレスを取得したのか謎で不気味だったし、社長を殺害する目的があったので断ったのだが……。  しつこい。出られるわけないでしょ‼︎  話をしたい気分ではないし、人生初の殺人に手を染めたばかりでまともな発声ができるとは思えなかった。少しでも気取られるわけにはいかないのだ。
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