第6話.おもてなし

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それから私は楓様の指示通りの時刻に夕食をお運びする。 メニューはメインにお魚とお肉を両方取り入れた、当シェフ自慢のフレンチコース。 事情を話したら、いつも以上に腕によりをかけて頂き、普段お出しするものより豪華に仕上げてくださった。 そんな自信作をご提供するも、楓様はそれについて一切触れることはなく、だた黙々と食べ始める態度は予想通りといえばそうだけど、若干期待していた分、無反応な様子に私は密かに肩を落とす。 けど、残さずしっかりと召し上がって頂けたので、それだけでも良しとしようと自分に言い聞かし、その後、空になった食器を引き上げてから、私は落ち着いた頃を見計らってマッサージ師を手配した。 こうして、一通り自分が出来そうなおもてなしを終えて、あとはいつものように楓様からのお呼び出しがあるまで待機する。 お風呂とお食事とマッサージ。 私が思いつくリラクゼーションはこれくらいしかないけど、果たして楓様はそれで満足して頂けただろうか。 気持ちを表に出さない方なので、どうお考えなのかは全く分からないけど、少しでも癒しになってくれればと。 そう願いを込めて、他にも何か尽くすことはないかと思考を巡らせていた時だった。 突然呼び出しのベルが鳴り、私は待ってましたと言わんばかりにその場から立ち上がる。 そして、その間に一つ思いついたことがあり、楓様のお部屋に行く前にラウンジへと駆け足で向かった。 「楓様、いかがされましたか?」 マスタキーを使って、私はいつものシャンパンを手に持ちながら部屋の中へと入る。 お食事中は赤ワインをご提供していたので、今日はまだこのお酒を飲まれていないことに気付いた私は、もしやと思いお持ちしたのだけど、何故かリビングには楓様の姿がどこにも見当たらなかった。 一体どちらにいらっしゃるのかと。私は各部屋を探し回っていると、寝室のベットで横になっている楓様を発見した。 恐る恐る近付いてみると、仰向けになりながらバスローブ姿で静かな寝息を立ててお休みになられている様子に、私は少し拍子抜けしてしまう。 枕元に携帯が転がっているということは、おそらく寝落ちしてしまったのだろうか。 これまで仕事に追われていたので、きっと体力の限界を迎えたのでしょう。 私はいつになく穏やかに寝息をたてていらっしゃる楓様の寝顔が何だか可愛らしく思え、くすりと小さく笑うと、転がっている携帯を元の位置に戻すため、手を伸ばそうとしたところで動きが止まる。
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