第1話.3121号室の謎

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チェックアウトの時間が過ぎ、後輩の桜井さんと各部屋の備品を準備していると、珍しい自分の名前を指摘され、私は気恥ずかしくなりながら彼女に由来を説明した。 「……へえー、そうなんですか。でも、今どきそれを律儀に守り続けるなんて凄いですね。美守先輩年上なのに私にずっと敬語ですし」 桜井さんは思いの外由来の意味が重かったのか、驚きのあまり大きく目を見開いた後、今度は尊敬の眼差しをこちらに向けてくる。 「そ、そうですね。小さい頃から躾けられていたので、人と話す時は敬語の方が落ち着くんです」 人に褒められこそばゆい気持ちになっていく私は、それを悟られないように誤魔化しながら、引き続きアメニティセットを各部屋毎にまとめていった。
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