光ホテル

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 一泊80万円の部屋ってどんなだと思って泊まってみたら天井は素より壁にも棚にも床にもベランダにもそこら中照明がパカパカ点いてるから上辺の明るさで目を晦ます根暗のように光で誤魔化してると感じた俺は、道楽の為には湯水の如く金を使う放蕩三昧男でありながらこんなことを言うのも何だが、地球温暖化が叫ばれ節電が呼びかけられているのに甚だしい電気の無駄遣いだ!延いては化石燃料の無駄遣いだ!無駄であることが贅沢なのかと思ったくらいで実際、無駄なサービスが多くて無駄な物が多くて無駄にだだっ広くて糅てて加えて家具や調度品が案外ちゃっちいんだ。心底、大損した気分になったね。だからゴージャスな美女でも付いて来るなら納得なんだけどなあと不満たらたらになった次第。そしたらほんとにそういう所が見つかってパネル操作だけでチェックインからチェックアウトまで出来て女の子の指名も食べ物や飲み物の注文もパネル操作一つで出来る自動精算機付きの無人ホテルなんだ。  で、女の子のタイプとか条件を色々入力して希望に沿った子を選んで呼ぶんだけど、これがまた、お誂え向きの美人で、この子と一泊出来るなら何十万払っても安い安いと思った程で、而も何でも言うこと聞いてくれて、こちらの要求通りにしてくれたりさせてくれたり、おまけにゴムなしで何度もやらせてくれるものだからこの世にこんなうまい話があるのか、こんな都合のいいいい女がいるのかと俺は全く信じられない気がした。  何しろ肌が綺麗で黒子もシミも出来物も毛穴一つすら見つからなくて、つるっつるで、あそこもその周りまでもが他の肌同様薄いピンク色で、乳輪も乳首も全然黒ずんでなくて真っピンクなんだ。ヤリマンだと黒くなるというのは都市伝説とは言え、こんな仕事してるのに1ミリも穢れた感じがないとは全く不思議な気がした。  顔の作りも体の作りも完璧で、いやもうほんとに姿形が理想的な上に柔順で素直で声も身心が蕩けそうで最高の女に思えたから欲しくて欲しくて溜まらなくなって到頭、愛の告白をした。すると、その時だけ南極の氷山みたいに冷たく立ちはだかって拒絶したんだ。だから何でだよと言いながら強引に抱き寄せようとすると、その時だけ物凄い怪力女になって俺を風船人形のように突き飛ばしやがったんだ。とても敵わねえと思ったよ。そしたら何事もなかったかのように、また遊びに来てくださいねって優しげに言うんだ。で、あ、ああ…って答えるしかなかった。  後で遊び仲間に聞いたんだけど、彼もそのホテルで同じように思い、同じ目に遭ったそうだ。してみると、あれは極めて精巧に造られたAIロボットだと俺は睨んだね。そう考えれば、話の筋道が立つじゃないか。現代科学技術の粋を集めた開発力を以てすれば、不可能なことじゃないなと彼と話し合い、あんないい女いる訳ないよなと空しく合点が行くのだった。  そう思うと、騙された、ぼったくられたと思うかと言うと、然程でもない。光で誤魔化す、あのホテルに対しては、騙された、ぼったくられたとまんま不満に思うが…
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