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三人が帰り、ママが涙を拭いながらリビングへと戻っていく。リビングで妹の舞音に伝えてからママも舞音も泣きはじめる声が聞こえた。
私は、何かに引き寄せられるように和室へと足を踏み入れる。空気が冷えていて真っ暗な部屋の中に、ぼんやりと光る仏壇が見えた。
そこに写真が飾られていた。
夏休みにミニバスの大会で優勝したときの私の写真だった。
なんで、こんなところに私の写真が?
色紙が何枚か置いてあった。
ミニバスのチームからと、クラスのみんなからの寄せ書きだった。
「幼稚園の頃から一緒に遊べてよかった。いつまでも忘れないからね 柳沢心桜」
「すごく楽しかった。凛音と出会えてよかった。今までありがとう。 篠崎由衣」
というメッセージを読んで、私、転校でもするのかなと思っていると、その隣の美優のメッセージを読んで、私の全身が凍り付いたような気がした。
「凛音の分まで一日一日を大切に生きていく。永遠に私たちは友達だよ 佐々木美優」
頭の中で何かが繋がっていき、すべての涙の意味がわかった。
急に足元がおぼつかなくなってきた。なんだか透けているような気がする。
ああ。
そうか。
私、死んじゃってたのか。
今になって私は泣き叫んだ。腹の底からの声をだした。
しかし、私のそれは一切、この肺が凍りそうな冷たい空気に響いてないようだった。ママも舞音もこちらに来る様子もない。
私の存在を示すことができない静けさの中で、私は自分の存在がだんだん透けていくことを感じた。そして、だんだん意識が遠のいていった。
ああ。
神様のいじわる。
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