恋の協力者

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 実は少し前に、俺の二葉に対する想いを、不覚にも月野に知られてしまったのだ。 「あのさあ。藤って、葵狙いでしょ」  図星を突かれて動揺する俺に、ニヤッと笑ってみせる月野。 「大丈夫だよ、多分他の人はまだ気付いてないから」  それを聞いてあからさまにホッとする俺に、月野が素晴らしい提案をしてきた。 「ねえ。あたし、協力してあげよっか?」 「え、マジで!? なんだよ~、ドキッとして損したぜ。おまえ女神かよ」  その後俺は、月野から二葉のいろいろな情報をゲットした。  誕生日、血液型、食べ物の好き嫌いや、好きな芸能人、などなど。  月野とは、中学は違うが最寄駅が同じこともあり、部活終わりに駅前のドーナツ屋に寄り道しては、二葉の情報を得た。  もちろんドーナツは、情報料代わりに俺のおごりだ。 「おまえ、ほんといいヤツだな。なんで俺にそこまでしてくれるんだよ」 「女子が多い分、うちの部って揉め事が多いじゃない? 藤が、そういうときでも頑張ってみんなをまとめようとしてくれてるの、わかってるからさ。そのお礼の気持ちだよ」 「そんな褒めても、これ以上なんも出ねえからな」  口ではぶっきらぼうに言いながらも、思わず顔がニヤけそうになる。 「わかってるよー。これだけで十分」  そう言いながら、月野が相好を崩していつものイチゴ味のドーナツを口に運ぶ。  そんな月野のことを、アイスティーのストローをくわえたまま、俺はぼーっと見つめた。  月野が、まさかそんなふうに俺のことを見ててくれたなんてな。  普段、「藤うるさい!」なんて女子には邪険に扱われてばっかで、部長ツラ……って思ってたけど。  そっか、そっか。俺の頑張りも、ムダじゃなかったんだ。 「あー、もうこれ、何度食べても超おいしい」などと言いながら、うれしそうにドーナツにパクつく月野を見ていたら、自分でも気付かないうちに口元がほころんだ。
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