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そんなこんなで順調と思えた俺の作戦だったが、早速問題が生じた。
梅沢の存在だ。
二葉のSPのごとく、常に梅沢がそばにいるのだ。
ひとりきりの二葉に近づくのは、なかなか至難の業。
休み時間。合奏の合間。学校の行き帰り。
いつだって二葉のそばには梅沢のヤツがいる。
そしてまた今も――。
「じゃあ、わたしの傘に入っていくか、葵」
「え、いいの? ありがとう!」
ホッとした様子で、うれしそうに言う二葉。
おい、ちょっと待て。ここは月野が「駅まで入れてってよ」と図々しく梅沢に頼んで、俺と二葉をふたりっきりにしてくれるところじゃないのか?
「あと一時間もすればやむとわたしの第六感が言っている。明里と藤は、学校前の喫茶店にでも入って、やり過ごすといい。わたしと葵は方向が同じだから、先に帰らせてもらうよ。なに、葵のことは、家まできちんと送り届けるから、安心してくれ」
「はあ!? ちょっと待て。なんで俺と月野があんなとこに……」
慌てる俺のことなどおかまいなしに、梅沢が靴を履き替え傘を開く。
「じゃあな、おふたりさん。ああ、言い忘れたが、移動するなら早めがおすすめだ。もう少ししたら雨足が強まるぞ」
だから、なんでおまえはそこまでわかるんだよ!
「ごめんね、ふたりとも。また明日ね」
申し訳なさそうにしつつも、梅沢の傘にしっかり入る二葉。
ああ、俺的最大のチャンスが……。
二葉の背中を呆然と見送ったあと、俺はがっくりとうなだれた。
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