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――いや。
ずっとこんな近くにいたのに気付かなかった俺が、相当バカだったんだな。
「誰がフラれたって?」
そう言いながら、思わず笑みが浮かぶ。
「そりゃあ、あたしがっ! ……って……え……あたし、ひょっとしてフラれ……てないの?」
俺を見上げる月野の怒りの表情が、俺と目が合った途端、戸惑いを含んだものに変わる。
「俺だって、さすがにさっきの今で、なに言ってんだよって思ってるよ」
頭をがしがしかきつつ、熱を持った頬を見られないように顔をそむける。
「……とりあえず、あの喫茶店で一時間雨宿りしようぜ」
そう言うと、俺は月野をかばうようにして小雨の中に一歩足を踏み出した。
ほんとは、一時間なんかじゃ全然足りない。
だって俺、こいつとだったら何時間でもしゃべれる自信あるから。
(了)
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