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小豆色のムクムクは、カバンから這い出た後は、希和子のベッドの上で一度伸びをすると、鼻をヒクヒクさせている。そのうち、希和子の方に顔を向けようと身体をひねったが、そのままコロリと転がって一回転した。結局、元の姿勢とかわらないので、そいつはまた、首をひねり、希和子の方を向こうとするのだが、やはりうまくいかず、くるりと一回転。めげずに何度も繰り返しているうちに、ベッドの縁まで転がって、そのままコロリと落っこちそうになったので、希和子は思わず手を差し伸べた。小豆色のムクムクはすっぽりと彼女の両手の中に転がり落ち、腹を見せた状態で収まった。
そいつはしばらく裏返された亀のように、四本の足をちまちまと動かしていた。その仕草がおかしくて、希和子の口元に笑みが浮かんだ。
クスクスと笑いながら、もじもじと動くそいつを、そっとベッドの上にのせた。両足が地面について安堵したようで、そいつはすぐにおとなしくなり、ゆっくり顔を上げて、人なつっこい黒い瞳を彼女に向け、チチっと、か細い鳴き声を発した。なんとなく、ねだるような、物欲しそうな、そんな声だった。
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