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「あの!」
自分でも驚くくらいの大きな声が出た。
「ずっとあなたのこと見てました!」
早口になった。
彼は不思議そうな顔で香澄を見た。それから、ぼんやりと車窓のほうに目を戻した。大型のホームセンター。ミニチュアのオモチャみたいな教習所。
――無視された。
首のうしろが、カッと熱くなった。気持ち悪いと思われたのかもしれない。ストーカーだと思われたのかも。それもそうだ。急に「ずっと見てました」だなんて言われても……。
香澄はうつむいた。ほとんど泣き出しそうだった。チラチラと、他の乗客の視線を感じた。大声で告白したのだ。みんなが自分を見ているような気がした。電車が止まると、香澄は逃げるように降りた。
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