夜のひとりごと

2/2
前へ
/2ページ
次へ
そうこうしているうちに、コツ…コツ…とこちらに向かう足音が聞こえた。 音がする度、身体にかすかな振動が伝わる。 あぁ、まだ人がいたのだ。 静かな空間に、不規則な足音がゆっくり、でも確実に近づいてくる。 そして、肩にトンッと手を置かれた。 「長峰せーんせっ、期末テストの採点終わりました?」 学年副主任の古見先生だ。まだ残ってたのか。 「あぁ、古見先生、今終わりましたよ。見てのとおり、アイツらまた欠点ばかりですよ。」 「あらぁ。また難しい問題出したんですね!」 そう言って、こんなにテスト散らかしてー、もうっ!とまるで母さんのように俺を叱る。 「違います、ちゃんと難しくなるよって忠告しましたし、テスト問題のヒントだって与えましたよ。」 「またまたぁ!うわ、服にインク付いてるじゃないですか、早く洗ってこないと!」 「もう、最悪です。さっきインク詰め替えた時にブシャって。洗濯で落ちるかなぁ……。数学教師やめてぇ……。」 思わず、愚痴をこぼしてしまった俺に、古見先生がどんまいっと声をかけてくれる。 「あははっ、そんな長峰せんせーに、コーヒーを入れて差し上げましょう!」 「……ありがとうございます。」 時計を見上げれば、22時37分。 奇しくもまた、素数だ。 そして、静かな職員室に、古見先生がポットに水を入れる音が響きわたる。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加