嘘笑い

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 マッチングアプリを利用したのはトータルで約二年あまり。  そんな中で、今でも傷になってしまった出来事がある。  ちょうど去年の今頃、私はリアルでもマッチングアプリでも失恋続きで、さらに母がコロナにかかって自宅待機をしなくてはいけなくなったりと、立て続けに不運が重なった。  それでも、幸せになる未来を諦めたくなくて、半ば執念を抱きながらマッチングアプリを続けていた。  その時にアプリ上で出会ったのが、K君といって、会う前に電話した時、同じ専門学校出身だと分かって一気に緊張が解れたのを覚えている。  K君とはそれからひと月ほどやり取りして、ラインの会話の流れで自然と会う流れになった。その時はちょうど桜の季節だったから、花見をしたり、山の中の綺麗な水を見に行ったりした。  K君はデートの最中、お金を全部出してくれたり、荷物を持ってくれたり、溝がある方を歩いてくれたりとまさに完璧だった。私はその度に少し恐縮しながらも、彼のことを着実に好きになっていくのを感じた。  ただ、K君が運転している最中、私がある質問をしてから、ゆるやかに夢の時間は終わりに向かっていく。サプリメントとか、そういうものを勧め出したのだ。  私はいくつか持病を持っていて薬を飲んでいるのだが、その薬の副作用はサプリメントを飲めば治るなどと言ってきて。  その時は彼の熱心さに押されつつも怪しんだりはしなかったが、後からいわゆるマルチ商法だと気づいた。  K君に騙されたことはもちろんだが、今でも思い出すことがある。  彼が私と話す時、終始笑顔を浮かべていたこと。  あの嘘笑いを思い出す度、背筋が寒くなる。
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