きみが紡ぐ物語

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「どうしてずっとこのままじゃだめなの?ぼくもずっとここにいたいよ」 それでも、なお男の子は叫びます。優しくあたたかく包んでくれた、ラクダとこの星から離れるのは、どれだけ言葉を尽くしても不安でいっぱいなのです。 「ぼくの役割はきみを送り出すことだよ。そして、きみの役割は、この星の優しさを次の新しい世界に紡ぐことだよ。新しい世界で、この星のそよ風の優しさのように、今度はきみが微笑んでごらん。この星がやわらく包んでくれたように、今度はきみが手をのばして誰かを包んでごらん。ここの優しさを次の世界に紡ぐために、きみは生まれるんだよ」  男の子のまぶたの裏にこの星の思い出がかけめぐりました。それだけで、男の子の胸はあたたかくなります。  この星の優しさを伝えたい。  らくださんが伝えてくれたように。 「わかった。ぼくはいってくる」 最後に男の子はらくだをそっと抱きしめました。 「きみなら、大丈夫。新しい世界では、きみはまだ何もできないけれど、優しさがきみを包んでくれる。新しい世界で出会った優しさときみの優しさを紡いで、また他の誰かをあたたかく包んであげるんだよ」 「今までありがとう」 男の子は暗いトンネルをくぐります。 その先にある光輝く世界に、この星とラクダがくれた優しさを紡ぐために。
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