きみが紡ぐ物語

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 その星はとてもとてもやさしい星でした。  小さな男の子はその星に守られて、ラクダに見守られ、10カ月10日(とつきとおか)、すくすくすくすく大きくなりました。 「僕たちはずいぶんたくさん旅をしてきたね」 男の子はやわらかい壁に体を預けながら言いました。 「そうだね。そして、とても大きくなったね」 もうこの星で旅をするところなんて残っていないくらい、男の子とラクダはたくさん旅をしました。  そして、男の子はもうラクダよりもさらに大きくなって、この星は幾分窮屈になってきました。 「なんだかこの星も苦しそうにしているね」 いつも優しい子守歌のようなそよ風がふくのですが、今日はうなり声のような苦しそうな風です。 「とうとう、その時がきたのかもね」 ラクダは男の子の手を取って言いました。 「その時って?」 男の子は聞き返しましたが、本当はわかっています。  あんなにやわらかかった地面がすっかり硬くなり、まるで男の子を寄せ付けません。 「大丈夫だよ」  ラクダは自分のおでこを男の子のおでこに優しくぶつけました。  そうしている間にも硬くなった地面が激しく揺れ始め、男の子は立っていることができません。  男の子はこの苦しそうな声を救ってあげたいと思います。  そして、暗く細い道を見つめます。  この星で一つだけまだ探検したことがない場所です。  この細い道の向こうにいけば、何かがかわる。そんな気がするのです。
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