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その星には名前がありません。
なぜなら、その星には小さな男の子と年老いたラクダの2人しか住んでいないからです。
「ねぇねぇ、あのね」
と話しかけるので、星の名前も男の子の名前もラクダの名前もありませんでした。
その星は風船のような形をしていて、内側に男の子とラクダが2人、他には花も虫も鳥さえもいませんでした。
2人きりで住んでいるなんて寂しくないか心配になりましたでしょうか?
2人の毎日はその星の隅々まで旅をしたり、ラクダが語るおとぎ話を聞いたり、毎日がとても新鮮できらめきに満ち溢れています。
男の子も小さく、ラクダは歩くのがゆっくりなので旅をするところがたくさんあるのです。
年老いたラクダと男の子は連れ添って旅をするのにぴったりで、ある時男の子はラクダに乗ってゆらゆら揺られ、ある時はラクダと一緒にゆっくり歩いていました。
そして、二人で空を見上げながら、ラクダが語るおとぎ話を聞くのが男の子は何よりも楽しみなのでした。
年老いたラクダは物知りなので、おとぎ話は泉のように途切れることなくわきでてくるのです。
ラクダが昔食べたというカレーライスという食べ物の話、つかめそうでつかめないひらひら可愛い蝶々という生き物の話、どこまでも続く海、優しく包み込んでくれるお母さん、広い背中のお父さん。
ラクダのお話はどれもこれも魅力的なもので、男の子は花も海もないこの星で思いを巡らせます。
そして、らくだは自分の話で目を輝かせてくれる男の子がいてくれて幸せだなと心の底から思うのでした。
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