***

5/7
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 フィアは、短い時間で次々と少女に質問を投げかけた。  そのどれもが簡単な質問ばかりで、しかも少女の生活に関する個人的な質問は一つもなかった。引っ越してきて、初めて学校に行った日。  ――どこから来たの?  ――どうして引っ越してきたの?  ――お兄さん病気なの?  ――なんで髪の毛赤いの?  そんな、クラスの皆が口々に尋ねてきたようなことを、フィアは決して訊かなかった。  その代わり、知ってもどうにもならないような、取り留めのないことばかり訊いてくるのだ。 「ねえ、スウプって知ってる?」  たとえば、こんな調子である。  ――寒い日や風邪を引いたときなんかに食べるって話、本当?  ――そのスウプってどんな匂いで、どんな味がする?  ――温かい食べ物って、どんな感じ?  ――晴れた日の水面は確かに温かいけど、あれと同じ味なら、別に食べたいとは思わないかなあ……
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!