君の心臓はまるで洗濯機

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 五月に入った。  おれはビブスがたくさん入ったカゴを抱えながら、足で立て付けの悪いドアを開けた。  中に入るとここを運営しているおじさんがいた。 「こんにちわ。もしかしてここの……」 「そうそう。あ、君が例の鈴木君だね」 「例の……?」 「あぁ。実は先週に飯田君から電話があってね、『もう数日もしたらこの洗濯機が壊れてしまうから、新しいのを用意できないでしょうか?』ってね」 「なるほど。それで……これを」 「それでね『来月から鈴木って奴が洗濯しに来るんです。それで彼はすごく静かな場所を好む奴なんです。だから音のならない静かな洗濯機を置いていただけませんか?』と。亡くなる前にそんなお願いされちまったもんだからさ」  おじさんの目の前には昨日まで置いてあったボロボロの洗濯機はなく、最新の縦型洗濯機が置かれていた。 「ありがとうございます……。」 「いやぁ、よく昨日まで使えたね。直そうとしたけど全然ダメだったよ。それで中身を調べてみたら酷くてさ、昨日動いてたのが不思議なくらいに」 「そうですか…でも最後に動いてくれて良かったです」
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