君の心臓はまるで洗濯機

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洗濯機の騒音が一旦止んだ時だった。 「空気悪いねぇ〜。換気する?」 「いやまじすまん。忘れてくれ」 「いいよ気にしないで」  君は微笑みながら外の景色を眺めている。  そうだ君はなんでここに来たんだ? 「じゃあ同じ質問させて貰うけど、なんで飯田がこんな所に来るんだ?洗濯機は体育館の横に二台もあるだろ」 「あ〜それなら先週その一台が動かなくなったんよ。それで残った一台は男子が使ってるから、女子はここの洗濯機をタダで使わせてもらってるわけ」  どうやらここを運営しているおじさんはうちの高校の元バスケ部だったらしく、快く貸してくれたらしい。今月は女子がここを使い、来月は交代で男子が使うとのこと。 「先週か。その洗濯機はまるでおれの腕だな」  と小さく呟く声は壊れかけの洗濯機の音にかき消されたが、君は確かに聞いていた。  君は洗濯機よりも大きな声で笑った。 「あははっ!何それ最高」 「笑い事じゃねぇよ」 「さすがムードメーカーって感じ」  笑う君をみてある盲点に気が付いた。 「なぁ飯田。ってかなんでお前が雑用係やってんの?三年だろ?」  その質問を聞いた君は焦るようにおれに背を向け洗濯機をの中を覗く。そして君は話を逸らすようにこう言った。 「ねぇ鈴木。部活行きなよ」 ガタンガタン 「その件は考えるからさ。だから質問に答えろよ」 ガタンガタン 「明日からでいいから。行かないときっと後悔するよ」 ガタンガタンガタン 「お前におれの何がわかるんだよ。もう大会には出られないんだぞ」 ガタンガタンガタン 「わかるよ」 「は?」 ガタンガタンガタン 「さっき鈴木は洗濯機のこと『まるでおれの腕だな』で言ったよね」 「あぁ言ったよ」 ガタンガタンガタンガタン 「じゃあ……」 ピーッピッーピッー  壊れかけの洗濯機は洗濯の終わりを知らせると、さっきまでの威勢を失いピタリと止まる。  君は笑顔でこちらへ振り返る。 「この洗濯機はまるで私の心臓だな!」  その言葉はおれの質問の答えでもあった。
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