君の心臓はまるで洗濯機

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ガタンガタンガタン  君が入ってきてから長い間会話はなかった。  座り込む君も元気がないように見える。 「さっきは……ごめん」 「何が?」 「目が合った時、おれ飯田のこと病人扱いしてたかも」 「あーあの時ね。いいよ慣れたもんだから!」  また君は笑って誤魔化す。  おれはこれ以上謝罪することはしなかった。それこそ君が嫌がるだろうから。 「今日、部活を覗いてみたんだ。」 「うん、どうだった?」 「怖かったよ。でも今日の飯田を見て少し勇気が湧いた気がしたよ。明日は顧問と話すところから始めようと思う」 「ほんとに!?」  おれは静かに頷く。その時の目は真剣だった。 「それでさ、さっき気付いたんだけどそのニサンガにはどんな願い事が込められてるんだ?」 「あーこれね」 ピーッピッーピッー  彼女は黙って洗濯物を取り入れるとカゴを「よいしょ」と持ち上げてこう言う。 「明日部活に顔出したら教えてあげる!」 「分かった」 「よし、じゃあまた明日な」 体育館から聞こえてくるブザーはこれ以上大きくあって欲しくなく、だけど耳には届いて欲しい。  そんな自己中心的な静けさは今日で最後にしよう。
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