九尾の妻

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それは、ひどい雨の日のことだった 荒れ果てた神社で、こぁぁ、となんとも情けない声が響き渡っていた。 「……?」 ここらへんいったいで有名の不良の俺、佐口健介はその鳴き声の出処を探しに今にも木が崩れ落ちそうで立ち入り禁止のところにまで入っていった。 パキ、と歩き、踏むたびに枝が折れる 「……こいつは……」 茂みの中にいたのは…………濡れてぐったりした 「犬……か」 犬。 雨の日に生き物をひろう不良なんて典型的だが、そもそも逆というか、不良になってから拾うというよりは、俺が不良になったのは、犬を飼わせてもらえないことへの反抗からであった。 『絶対大切にするから!なんでだめなの!』 『だめなものはだめ、家狭いし 誰かの部屋が押し入れになるわよ』 『それならお父さんの部屋を押し入れにすればいい!なんで飼っちゃだめなんだよ!』 それでも 家主を押し入れに追いやることは認められず 犬のゲージまで買っていたのに飼わせてもらえなかった俺はその日、泣きながら喧嘩にあけくれ 番長を倒し、そのままこの町内トップの不良にまで登りつめた。 顔を殴り、骨を砕き そんなことをしてるうちに、さらに遠ざかっていた ペットのいる生活への憧れ。 柔らかい体を手で包む。 俺はいま、親のわずかな仕送りとバイトで生活しており、一人暮らしだった ペット可の物件だ。 「…………こいつ、飼うか」 運命を感じた。 同時に、それに怒るように大きく雷が鳴り響いた。
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