見舞いと口付けと

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「そ、そうです。駆け落ちの誘いです。どうか、私の妻になって頂けませんか?」 「は、はい。妻になります!あの、これはただの夢ではなく、実際にお互いの意識がセファ様の夢を介してあっているんですよ。」 そう言って慌ててリリアは胸元にあったリボンを解いて、セファの手に巻き付けた。 「こうすれば、現実にこのリボンを持って帰れます。だから、忘れないで下さいね。」 「ええ。でも、私が忘れてしまっても、リリアから一緒に逃げようと言ってくれたら、頷くと思いますけれど。」 セファがそう言うとリリアは折角求婚してくれたんだから忘れないで下さいと怒ったような顔をして言った。 すると、急に世界が歪み始めた。 彼女が驚いていると、姫は優しい顔で「安心して下さい。あなたが目を覚まそうとしているだけです。」と言った。 そのままリリアは穏やかな声でこう続けた。 「ねえ、セファ様。私は吸血鬼の先祖返りですし、あなたを怪我させてしまいました。だから、童話の中に出て来るような清らかなお姫様ではないのでしょう。でも、そんな私で良いと言ってくれるなら、精一杯尽くしますからー。」 セファが目を覚ますとそこは見知らぬ部屋だった。 彼女はその一室にあるベッドに眠らされていた。 恐らく、窓の外の光景を見る限り、ここは王宮の一室だろう。 全ては夢だったのだろうかとセファは一瞬思ったが、手にはリリアがくれたリボンが巻き付けてあった。
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