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エピローグ
「それでその話はどうなったんだい、マスター」
バーのマスターはカウンターに座ったマヤの恩人へカクテルを差し出すと、話の続きをした。
「何のことはありません。お二人は無事に結ばれた。ちょっとした行き違いや、勘違いから人間関係とは大きく変わるものです。良くも悪くも」
「確かに。でもこれでマスターの希望にそう結果になったようで、何よりだよ」
「さて、どうでしょう」
マスターはグラスを磨きながら、死神を引退する前に担当したマヤの事を思い返す。
恋というよりも、保護者に近い感情。
人身御供とされて死にかけた少女の魂を回収しようとして、しなかった男。
その後、後任になった担当者たちは、皆彼女を利用しようと近づいている事を知った。死なない体ならば、無茶なことも出来ると考えたのだろう。結果、それが実行される前に──処理した。
その結果、表向き冥界を追い出され、人と冥界の間を彷徨う存在となった。
けれど後悔はない。
あの時、少女を助けようと前に立ちはだかった人魚の勇姿、そしてそれに応えるように生き続けるマヤ。不老不死がどの程度生きるのか分からないが、それでもあの男となら幸せに添い遂げられるだろう。
運命なんてものは覆らないようで、意外とどうとでもなってしまうものだったりする。確かに一人では覆すのは困難かもしれないが、幸福になってほしいと望む者たちがいれば少しずつ運命の歯車は変わる。
それを彼女は、マヤは照明したのだ。
ポートワインをマヤは嬉しそうに飲んだのだから。
「ええ。これ以上ないほどに満足ですよ」
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