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「ここっぽいな」
「まだ新しくて綺麗だな」
何事もなく放課後。ラーメン好きな友人をもう一人つれ、三人でラーメン屋へとやってきた。時間は16:30付近を示しており、小腹もすきつつ待ちのお客さんもいない良い時間帯である。
入り口のドアには貼り紙が貼ってある。
『ラーメンの味を楽しんで頂くため、店内は私語厳禁としております』
「え、そうなん?」
「それだけ味に自信あるってことじゃね?」
「まじかよー。ワイワイ食うから旨いと思う部分だってあるだろうに」
「言ってやるなよ」
店に入る。耳に届いた音楽は流行りのポップス。随分と大音量で流れているそれは、入った事は無いもののパチンコ屋の店内で流れているくらいには大音量に思えた。そして目に映るのは、席と席の間にある巨大な仕切りだ。座席に座ったら隣の人が見えなさそうである。
「三名様ですね。こちらにどうぞ」
促されるまま座席に着く。座席に座れば両隣の友人の顔は全く見えない。カウンター正面には簾がおろされている。かつて別の店で見たことがある。ここからラーメンが出されるスタイルの店らしい。
カウンターの上には『注文は右手にあるタッチパネルよりお願いします』との文字が。
「これか」
返答のない独り言を溢しつつ、タッチパネルを起動する。上から特選ラーメン、ラーメン、醤油、塩とあり、画像と値段が共に表示されている。
大概こう言う場合の違いは上に載っているトッピングだけ、と言うのが多い。色々載せると体感的には割高になるため、普通のラーメンを選択。注文を確定しようと右下の注文ボタンに触れれば、再び画面が転換する。
『予めレビューを頂ければ、☆の数に応じてお値引き致します。是非レビューをお願いします!』
「えっ。おい隼人これって……」
「私語厳禁でお願いします」
まさかの食べる前からのレビュー催促。思わず隣の隼人に声かけしようと思った矢先、狙ったかのように店員から声が被せられた。
「あ、すみません」
咄嗟に謝罪の言葉が出てきたものの、よくよく思えば謝らなければならない理由があっただろうか。とは言えこの段階からもう一度隼人に声をかけるのも憚られ、再びパネルの画面へ視線を落とす。
「レビューか……」
値引き幅については☆一つにつき40円との記載。つまり最高ランクである星5レビューを行えば200円の値引きになると言うことだ。学生からすれば確かにこれは使いたい。とは言え残念ながら俺はそう言ったサイトに登録をしていない。わざわざ登録して、と言う手間をここでかけるか考えたが、200円なら許容しようと言うことで、サイトの登録はせずに注文を確定させた。
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