静謐な彼女の頭の中の金の針

7/9

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 頭の中が静かな叶さんは、痛みまで静かなのだな。  少し感動しながら、僕は、叶さんに僕のような特異な性質がなくて良かったと、安堵の溜め息をつく。  他人の頭の中を勝手に聞いておきながら、僕は自分の音を、聞かれたくなかった。  だって、先生の幸福を暴露した自分から、どんな音がしていたか、知っているから。  叶さんの澄んだ思いが壊れるのを喜んで、どんな醜い歓呼と喝采を上げていたか、知っているから。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加